「至高のゼロ」について |
この零戦キットはファインモールドの創業20周年を記念して同社の技術の粋を尽くして造られ、2007年の静岡ホビーショーにて参考出品され注目を集めました。1/72スケールの飛行機模型としてはかつて例を見ないほど高品質でしたが、その代償に商品化するとその価格は5000円近く(ハセガワ1/72零戦の5倍弱)と破格値になってしまいそうなため、当時はまだ発売するかどうかさえ決まっていなかったそうです。
このキットをなんとか常識的な価格で商品化するためにとられた奇策が模型雑誌への付録化でした。月刊モデルグラフィックスとのコラボレーション企画という形で「至高のゼロ」と銘打ち、そのパーツを分割して2007年11月号の「接触編」、12月号の「発動編」の2回に分けての「マガジンキット」という分冊百科のようなスタイルで発売されました。
(「接触編」・「発動編」のサブタイトルは、1982年に二部構成で劇場公開されたアニメ映画「伝説巨人イデオン
接触編・発動編」のオマージュです。)
同雑誌の記事によると、この方法なら価格を大幅に抑えながら通常10年かかっても不可能な出荷量をたった2ヶ月で達成できてしまうのだとか。価格は各1580円で、これは月刊モデルグラフィックス通常価格780円の約2倍でした。
誌面内容は無論至高のゼロ特集になっており、組立説明図やキットの作例以外にも、ステップバイステップ式のわかりやすい製作ガイドや実機の資料などが載せられていました。
※追記
その後この零戦キットはバリエーション展開され、スケールアヴィエーション2009年
01月号に「至高のゼロ第二弾」として32型が、モデルグラフィックス2011年2月号〜3月号に「究極のゼロ」として52型のキットが付録販売されました。
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キットレビュー |
11月号「接触編」はエンジン、胴体、コクピットのパーツとデカール、12月号「発動編」は翼とクリアーパーツという風に分割されてます。
パーツ同士の精度は極めて高く、レーザー加工やスライド金型を使ったシャープなモールドや薄く鋭利に処理されたエッジは「見事!」の一言に尽きます。特にエンジンとコクピットは1/48でも省略されてる部分まで精密に再現されており、タミヤ1/32零戦のスモールダウン版のような印象を受けます。
キャノピーやカウルフラップ、主翼構成パーツ等の選択により、動作状態や製造ロッドごとの差異を再現可能。デカールのマーキングは、「昭和16年12月・空母端鶴・岩本徹三機」、「昭和17年8月・台南海軍航空隊・坂井三郎機」、「昭和18年秋〜19年初旬・第263海軍航空隊『豹』部隊機」の3種類が用意されています。
パーツ成形色は、灰緑色、シルバー、ダークグレー、機内色、クリアーとスケールモデルとしては格段に多く、無塗装で作ってもそれなりの完成品になる工夫がされているのも特徴です。これは「組むだけでワクワクする製品を目指した」のことで、鈴木社長が月刊モデルグラフィックスのインタビュー記事でガンプラを意識したと答えてます。
私個人としては、このキットの品質には感動を覚えました。「至高のゼロ」の名に相応しい逸品だと思います。 |
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至高のゼロ 制作記 |
そのままでも十分すぎるクオリティを持ったキットなので、当初は素組みか軽いディテールアップ程度に飛行甲板のディスプレイベースを付ける予定でしたが、軽いチャレンジのつもりでこの小さなエンジンにパイピングを施したら予想外に見映えが良くなったので思わずリミッター解除!その結果、時間をかけてそれ相応に手を入れた作品となりました。
ディテールアップは主にエンジンとコクピットに集中。翼端部は折り畳み状態と展開状態の二者選択式を、パーツ差し替えで両方再現できるように改造し、カウルフラップもカウル側固定からエンジン側固定にして、カウルを外した状態でも実機と同じ構造を再現しています。自作アクセサリーも当初の予定より増やして賑やかにしました。
機体のマーキングデカールは「空母端鶴・岩本徹三一飛曹搭乗機」を選択。昭和16年〜17年頃の空母端鶴飛行甲板上でのワンシーンを想定したビネット仕立てです。 |
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