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プラモデル徹底工作 自動車模型フル開閉&電飾超絶テクニック

類い稀な良書として以前レビューした「プラモデル徹底改造 自動車模型フル開閉化編」。


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その続編が発売されたので購入しました。その名も「自動車模型フル開閉&電飾超絶テクニック」。

前刊のドアハッチのフルオープン化に加えて最近徐々に注目されてきたLED電飾を前面に押し出した内容となっています。



今回の作例はトヨタ・エスティマとポルシェ917Kの2つ。

電飾は前刊のランドクルーザーでも前後灯の点灯をやっていましたが、今回はそれに加えてウインカーやハザート灯の点滅だったり、ポルシェに関してはそれ以上の機能再現を行っています。


巻頭には本編である製作記の前に序章として、模型と実車のドア・オープンの構造の違い、なぜ模型の(出来合いの)ドアオープンは実車と同じ構造になっていないのかその理由、そして実車構造再現のポイントが図解付きで解説されています。
まずこれを頭に叩き込んでおくと、本編のドア改造の手順を読んでて理解しやすくなります。


第1章は淡路修史氏によるトヨタ・エスティマのフルオープンモデル。元になってるキットはフジミ・インチアップシリーズの1/24エスティマG/Xで、新たな取り組みとしてミニバンの特徴であるスライドドアのオープン化が行われています。

※青い枠の画像はクリックで拡大します。
スライドドアの加工作業。実車同様アッパーレールとセンターレールの2点をアームがスライドして開く構造。またそれらのギミックは完成後、内装の内貼りで隠れる仕組み。 ドアが大いく開く分、内装のディテールアップも増しています。画像ページはシートにオットマン(足置き台)、アームレスト可動、リクライニング機能、シートポケットを再現してるところ。

ウインカーの点滅回路を自作。この部品を揃えてこう組めば出来上がるという解説なので、電子工作の知識がなくてもはんだ付けさえ出来ればなんとかなりそう。 チップLEDでドアミラウインカー点滅。ボディと独立した部分なのでどうやって配線するのかと思ったら、ドアヒンジに虫ピンを使い、それを導線代わりに通電させるという方法でした。アイデアに脱帽!

完成写真の一部。テールライトのドット調を光ファイバーを束ねて表現しています。 エスティマの仕様解説。


第2章は高橋浩二氏によるポルシェ917Kで、フジミ・ヒストリックカーシリーズ1/24ポルシェ917K '71ル・マン優勝車からの改造。

エスティマがスライドドア開閉を新たにやったのに対してこちらは2点ヒンジで斜め前に持ちあがるバタフライドア開閉を再現。他にリヤカウル開閉+脱着、ボンネット点検口脱着可能にしてエンジンなど内部メカ再現。
電飾はヘッドランプのハイ・ロービーム切り替え、ゼッケン灯点灯、左右ウインカー点滅、ハザード点滅、テールランプ点灯・ブレーキ灯点灯切り替え可能とさらにすごい事に!
アルミ合金製フレームを真鍮線でフルスクラッチ。キットのシャシーまわりに虫ピンを刺してアタリを取り、真鍮線に置き換えていくという手順。 キットのエンジンは簡略化されているので、エンスージアストスリーズのポルシェ911のエンジンを2つ使ってスクラッチ。排気管は焼きなました真鍮線で再現。

電飾に使った部品の一覧表。値段も記載されているので、これくらいの電子ギミックの場合でおおよその費用がわかります。 ヘッドランプは実車に近い光を再現するため、伸ばしランナーでバルブを作ってリフレクターに反射させるという本当のランプ構造を再現。

完成写真。自作エンジンと真鍮製鋼管フレームの効果が凄い! ポルシェ917Kの仕様解説。


この作例のすごいところは、

  • ドア・ハッチの開き方をスケール的制約によるミニカー的構造にするのではなく、あくまで実車構造にこだわって再現している。
  • 開けたときに見えるボディ側のドア受け部分も、実車と同じに再現されている。
  • 閉めた時のチリ精度やガタ付きが出ないようネオジム磁石やICソケットで固定する工夫がある。
  • 内装のディテールアップが尋常ではない。
  • 電飾が単なる点灯だけでなく、点滅やハイ・ロービーム切り替えなど、もう一歩踏み込んでる。
  • ドア開閉と内装再現をここまで追及して余剰スペースがほとんどないにも関わらず、基盤や電池ケースといった電気回路を外に逃がさず内部の見えない場所にすべて組み込んでいる。



前刊が一般的な横開きドアだったのに対して今回はミニバンのスライドドア、レーシングカーのバタフライドアという風に内容がカブらない模型が選ばれており、またもやどうかしてるレベルの超絶作です(笑)。

かといってこの本はプロの作品集でなく製作ガイドなので、製作記はおざなりにせずにエスティマで61ページ、ポルシェで39ページも尺を割いており、カットしたところがほとんどないのでは?と思う位手順が細部まで余すことなく解説されています。無論作り方が分かったところで誰でも真似出来る代物ではありませんが、取り入れられそうなところは取り入れたり、ヒントやインスピレーションを得るには申し分ない読み応えで、そこまで考えずにただ読むだけでも製作に立ち会ってるような気分になる面白さがあります。

もうひとつの柱である電飾については、プログラミングといったのプロ級の技術を取り入れたものではなく、素人でもギリ理解可能な域で止めており、その解説も小難しい計算や理屈の説明はあえて省いて、この部品をこう組めばとりあえず光りますという風になっています。私のように模型の事は理解できても電気の事は計算式とかさっぱりという人はきっと少なくないでしょうし、そこを突き詰めると今度は電子工作の技術本になってしまい主題がぼけてしまうので、適切な判断かと思います。

この本も前刊のコンセプトをそのまま継承した良書であると思いますし、電飾は各ジャンル模型の製作法やマテリアル開発が飽和になりつつある昨今において残されたフロンティアの一つだと思いますので、そこをテーマにした本は今後も続いて欲しいですね。




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(2016/05/10)


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