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築城指南書 -日本の城郭プラモデルの作り方-
12月18日に発売になった城プラモ本「築城指南書」のレビューです。



カテゴリーとしては昔から存在しつつも地味な存在の城プラモですが、戦国ブームが追い風になったのか人気がジワジワ上がってきて、このたび初の専門書まで発売となりました。

大日本絵画&アートボックス社の本なので、コアな層を狙ったプロモデラーの作品集みたいな感じの本になるのかなと当初思いましたが、実際は「築城指南書」のタイトルどおり城プラモの作り方ガイドに主軸を置いており、初の城プラモ本なのでターゲット層をあまり絞らずに初心者から上級者までを広く狙った構成になってました。


最初のコンテンツはモデラーによる城プラモの作例集になっています。



実は私も今回この本に少し関わっていまして、表紙にも載っているGSIクレオスの1/144熊本城の作例を担当させていただきました。2月発売予定のまだ世に出ていないキットなので、初期のテストショットを使っての製作となったため製品版とは細部が異なる可能性があります。

初めて本を見たときプロのカメラマンのすごさにびっくり!えーコレホントに自分の作った熊本城?という感じで、それくらいキレイに撮れてます。

後のページに載っている製作ガイド編「熊本城をつくる」では、体裁上「応援:藤田幸久・岸川靖」とクレジットされていますが、実際のところお二人には応援どころじゃないくらい助けていただきました。




超絶技法が炸裂した秋友克也さん作・童友社1/500高知城。

現代の姿を再現しており、石垣に設置された排水管から案内板や消火栓、ベンチ類に外灯といった庭内の施設や樹木の位置など確認できるものはみんな再現してるそうな。さらには天守最上階内部も再現して観光客フィギュア付きという懲り様!

関東地方で12月18日に放送されたタモリ倶楽部の城プラモ特集で取り上げられ、某ネットコンペでも上位入賞した作品なのでご存知の人も少なくないのではと思います。




これまた細かい岸川靖さん作・童友社1/540安土城。

映画「火天の城」のポスターを再現した作例で、足場の再現がすごいことになってます。細かく作られたぶん写真では気付きにくいですが、実は手のひらに乗る程度のとても小さな模型です。



掲載されてる作例一覧です。(掲載順)
メーカー キット名 製作者 掲載ページ
GSIクレオス 1/144 熊本城 おまみ P4-P7
童友社 1/350 姫路城 竹内規矩夫 P8-P9
フジミ 1/850 姫路城 神村靖宏 P10-P11
童友社 1/500 姫路城 川崎久美子 P12
フジミ 1/800 江戸城 藤田幸久 P13
童友社 1/500 高知城 秋友克也 P14-P17
童友社 1/350 名古屋城 秋友克也 P18-P19
童友社 1/350 名古屋城 藤田幸久 P20-P21
童友社 1/350 岐阜城 岸川靖 P22-P23
童友社 1/350 大阪城 宮脇修一 P24-P25
フジミ 1/400 小倉城 岸川靖 P26-P27
童友社 1/540 安土城 岸川靖 P28-P29
童友社 1/450 松山城 秋友克也 P30-P31


海洋堂の宮脇センム、プラモのモ子ちゃんの藤田先生、エアモデルライターの竹内さんなど有名どころが名を連ねており、よくこの中に自分も混ぜてもらえたなあと今でも不思議に思います。
次にこの本「築城指南書」のタイトルの由来であるメインコンテンツの城プラモの作り方ページですが、「初級編」・「中級編」・「上級編」の三部構成で、それぞれ別のキットを使ってのステップバイステップ方式で解説されています。



《初級編・松本城をつくる 3日日間でつくる城プラモ(17ページ)》
童友社1/350スタンダード松本城・秋友克也さん製作。

初心者向けということで、筆塗りとちょっとした工夫や軽い一手間で、3日間で見映え良く完成させる製作術を紹介しています。ホントに見映えが良いんで驚く!

この完成品のみモデラー作例集のものではありません。




《中級編・姫路城をつくる 美しき白亜の城をつくろう (23ページ)》
童友社1/380デラックス姫路城・竹内規矩夫さん製作。

塗装にエアブラシを使用します。石垣をリューターで掘り直したり、グレインペイントを使った地面の表現、完全自作の樹木など、よりディテールの凝った完成品を作っています。




《上級編・熊本城をつくる 精密キットを組む (22ページ)》
GSIクレオス1/144熊本城・不肖私が製作担当。

普通の城プラモは天守を中心にその外側の庭園を作るのですが、この熊本城は逆に天守の中身を作るという特殊なキットなので、他のプラモへの応用向けではなくズバリクレオス熊本城の作り方ガイドになってます。

完成後も重箱のように各階を取り外して中身が見えるという立体パズルのようなキットなので、それを見映え良く機能させるために部品精度を向上させ、ビッグスケールに相応しいようディテールを追加したり色数を増やしたりしてみました。




各章や製作過程の合間には城プラモ作りのヒントや豆知識のコラムが挿入されており、かゆい所に手が届く内容でした。


掲載されてるコラム一覧。
No. タイトル&内容 掲載ページ
Column 01 塗料に関する基礎知識 1 -各種塗料の紹介- P33
Column 02 初心者にオススメのキット -「城プラモは難しい」はウソ?- P41
Column 03 銘板のつくり方 P47
Column 04 作品ができたらケースに飾ろう -簡単&本格派ケースの作り方- P48
Column 05 豊臣秀吉が築いた三重天守 P51
Column 06 塗料に関する基礎知識 2 -違う種類の塗料同士の重ね塗りの順番- P55
Column 07 パテについて -各種パテの紹介- P57
Column 08 城プラモに使えるフィギュア -極小スケールフィギュアの紹介- P72
Column 09 復元整備が進む熊本城 P75
Column 10 完成品モデルを改造する -一手間加えてさらに見映え良い模型に- P106
Column 11 城プラモデルの歴史 -我が国の城プラモの歩み- P109




《特別コラム・古写真で見る名城たち(P96-P100)》

誌面には作例に使われた城の記事以外に、観光用として戦前に売られていた絵はがきによるかつての名城の姿が多く掲載されています。明治・大正期のそれらやまわりに写ってる風景と人々の姿はその歴史の重みを感じさせ、興味深いものがありました。

掲載されている写真:名古屋城 / 熊本城 / 高地城 / 鶴ヶ城 / 松本城 / 姫路城 / 岡山城 / 広島城 / 大阪城




《付録・城プラモカタログ(P101-P111)》

巻末の付録コンテンツで、現在までに発売されたプラモデルを一挙紹介。童友社、フジミ製組立キットや彩色済完成品モデル。ウッディージョーと小林工芸、ディアゴステーニの木製モデル。さんけいのペーパーモデルまで網羅。

編集部で組んだキットにはレビューが付いていて、メーカーお仕着せの解説じゃないので良い面悪い面の感想が実直に書かれており購入の参考になります。
レビューが付いていたキットの数は数えてみたら20種類。
それ以外のコンテンツとしてはこんな感じ。
タイトル 内容
城プラモの極意 各章のところどころにちょっとしたTipsを挿入。植栽の色々な方法や石垣の表現法あれこれなど。各章の要所要所に挿入。
城郭ファイル 初級・中級・上級編で作られた模型の実物の城に関する解説。城各部ディテールの詳細な解説もあり。各章の要所要所に挿入。
精密イラスト 姫路城内部図解: 画・伊藤展安 / 姫路城復元図: 画・中西立太 / 熊本城復元図: 画・中西立太



総括
自分が参加したから持ち上げるわけじゃありませんが、実際に読んでみて城郭模型の製作ハウツーを一通り上手にまとめたなと思いました。

短所は価格の4000円+消費税でして、大日本絵画の本はみんなこれくらいなのでこの本だけが特別高いというわけじゃないのですが、マニアならポンと出せてもこれからエントリーしてくる人や興味半分の人にとっては少々辛い価格設定かと思います。

内輪話ですが、この本の編集担当さんは無類の城マニアで、戦国ブームを追い風に出た本ではあるけれど「とりあえず時流に乗っかってみました」的な物ではなく、好きでやってる事への熱意が伝わる内容だった事を最後に付け加えておきます。

値段に不満があっても内容に不満のある人は少ないと思われます。





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《サイト内関連ページ》





おまけ
クレオスさんから熊本城を作ったお礼というかおつかれさまでしたという意味で、新製品の「Mr.カラー城」を後日いただきました。(他にAFVクラブの新製品とかもいただきました。感謝です!)

色は全部で6種類。
  • CK1 石垣色
  • CK2 瓦色
  • CK3 漆喰色
  • CK4 板敷・柱色
  • CK5 外板壁色
  • CK6 畳色
となっていてセット販売ではなくバラ売りされています。
私が熊本城を作ったときに提供を受けた塗料はまだ試作状態で粒子が粗かったりしたのですが、この製品版はそれが改善させており、特に漆喰色はあの独特の白を上手く再現していて良い感じです。(この色は製作時には試作品も間に合いませんでした)

肝心の熊本城は残念ながら同時発売できずに2月に発売延期になってしまいましたが、この専用カラーは他の城郭模型にもそのまま使えますので便利かと思います。


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(2009/12/23)



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