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ゴッドハンド ニッパーピンセット「刃がないニッパー」 |
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ペンチだと大きすぎるけどピンセットだとうまく保持できない・・・そんな極小パーツの組み付け・加工に!全く新しい「つかみツール」です!
(ゴッドハンドHP・刃がないニッパー製品ページより)
高性能ニッパーで頭角を現してきたゴッドハンドの次なるニッチ向け新製品、その名も「刃がないニッパー」。
ラジオペンチとピンセットの中間的な用途として開発されたニッパーでして、これはニッパーの刃をわざわざ落としてピンセットとして使っているという利用者の声を拾った製品なんだとか。そのほうが力のかかる作業のときしっかりつかめ、細かい部品を飛ばさなくて便利なんだそうです。
なるほどなあと頷きましたが、実際に使ってみないとどの程度使える代物かはわからない・・・
そんなわけで刃がないニッパー初回ロットを購入し、2カ月ほど使ってみた感想です。
刃がないニッパーの特徴
同社の看板商品アルティメットニッパーと同じ原型が使われており、グリップが淡いエメラルドグリーン色なのがパッと見の相違点。間違えて使うと悲劇が待っていますので気を付けましょう。((
;゚Д゚))
先端が細く切削加工されており、裏には「刃がない」の刻印があります。
ノギスで測ってみると、合わせ目断面の厚みは05〜0.6mm、長さは8〜9mm。 またグリップのバネはその反動が馴染めない人向けに、側面の開きすぎ防止ピンを抜けば取り外し出来るようになっています。
咬み合わせはご覧のとおりぴったり!
先端だけでなく合わせ目根元ももっと細くして欲しかったところですが、工具としての強度とかを考慮しての形状なのでしょう。
この製品の用途である小さいパーツに力のかかる作業は、私の場合使い古して先端の精度が多少狂っても構わないツル首ピンセットで普段行っていまして、その作業を刃がないニッパーで代わりにやってみました。
部品の押し込み、引きはがしに使ってみた
売りにしている極小パーツの押し込み、引きはがしを、組み立てに力のかかるフジミ製スナップフィットキット「ちび丸艦隊・赤城」で実際にやってみました。
咬み合わせ精度はピッタリで、剛性が高くてガタ付きは一切なく文句なしの保持力!広告に偽りなく挟んだまま強く押したりしても部品を飛ばす事はありませんでした。
また接着剤を使った普通のスケールモデルの場合でも、接着後の部品を引きはがすのに重宝します。私は現在出版社からモニターを請け負ってる分冊百科「世界の軍艦コレクション」の塗装完成済み模型をディテールアップするのに分解する事がままあるのですが、瞬間接着剤でガチガチに組まれてるにもかかわらず、コイツでバキバキ剥がせています。
とはいっても原型があのデリケートなアルティメットニッパーと共通ですので、負荷による破損が起きるのではないかと気になりました。その辺ゴッドハンドに伺ったところ、社内の荷重実験では押し引き共に9kgくらいまでは耐えられたとの回答をいただいたので、模型製作における使い方程度ならまず問題なさそうです。
追記(2014/06/01)
第二生産分からの新パッケージ裏には、
挟む場合の最大耐荷重
- 先端〜5mmまで: 約1kg
- 根元: 約5kg
引き抜き・押し込み最大耐荷重: 約5kg
と記載されており、
これが公式スペックに決まったようです。
(左画像はクリックで拡大)
力を入れても極小部品をはじきにくいようにしなりを抑えたピンセットは、ホーザンの強力型ピンセットやエンジニアの鉄腕ピンセットなどが既にありますが、それに加えて押し込み、引きはがし負荷に耐える強度を持っているのは、この製品だけの強みと言えます。
刃がないニッパーの弱点と使用時の注意点
ただピンセットの代わりに扱えるといっても元がニッパーなので、使い方にはこの製品独自の注意点が存在します。
ピンセットの持ち方は箸やトングと同じという人がほとんどだと思いますが、ニッパーは握る形になりますので、どうしても必要以上に力が入りやすくなります。その上ピンセットのように柄がしなって力を逃がしませんから握力がダイレクトに部品に伝わり、気を付けないとわりと簡単に部品を痛めてしまいます。
なので部品の挟み方には一工夫が必要。
挟む部分の面積を出来るだけ広くし、力が分散するように持つと破損のリスクは小さくなります。
下画像のように刃先の一部だけを使って強く挟むと、部品の一局に力が集中して刃痕が付いてしまう事があります。
はさむ面積はピンセットですが、力のかかり方は先細ラジオペンチやヤットコと同じ。そこを理解しないとかえって使いづらい製品で、馴染めるかどうか人を選ぶ工具かと思います。
その他の使い方1 極小エッチングパーツの曲げ加工
これもメーカーが提案してる使い方のひとつ。
極小エッチングパーツを曲げるのに、模型用として流通してる代表的な工具のタミヤエッチングベンダー・ミニと比較しました。
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咬み合わせ面の幅ですが、刃がないニッパーはエッチングベンダー・ミニよりはるかに小さいです。
下画像のエッチングメッシュは網目の一辺が1.0mmでして、エッチングベンダー・ミニでは不可能な一マス単位でのコの字加工も、刃がないニッパーなら刃先が入るので難なく出来ました。
これは例えば艦船模型の手すりや艦橋窓など、極めて短いピッチでの複雑な曲げ加工において有効です。
また咬み合わせ性能も両者はかなり開きがあり、寸分のズレもない刃がないニッパーに対して、エッチングベンダー・ミニはカシメの問題なのか強く握ると少々ブレます。
ただ曲げ加工専用に作られた工具ではありませんので、直角以上の曲げ作業になると、断面が三角形になっているエッチングベンダー・ミニのほうが使い勝手良かったです。
その他の使い方2 細部のペーパーがけ
耐水ペーパーを小さく切って版画道具のバレンのように折り畳み、これをつまんで細かい部分や奥まった部分のサンディングを行いました。
使い心地は良好で、力が入れやすくてしっかり磨ける上にピンセットみたいに先端が狂う心配も要らず、これは使えます!しかも重量が60gと軽いので、長時間磨いていても指先があまり疲れませんでした。
スポンジやすり、コンパウンドがけも同様です。
その他の使い方3 塗料瓶内ブタ外し
クレオスのサーフェイサーやガイアノーツの塗料瓶には揮発防止の内ブタが付いており、使っているうちに垂れた塗料で瓶にくっついてしまう事がしばしばありまして、これを剥がすのも今まではピンセットでした。
刃がないニッパーは先端が薄いのでピンセット並に隙間に差し込みやすく、力を入れやすいのでより簡単に外すことが出来ました。また刃が付いてないので内ブタを切ってしまう心配もありません。
その他の使い方4 エアーブラシノズルのレンチ代用
エアーブラシ先端のノズルを外すには専用のレンチが要りますが、刃がないニッパーは咬み合わせ精度が良く、ねじってもびくともしない強度がありますので十分代用出来ました。レンチが手元にないときパッと使えて便利。
力の入れすぎでねじ切らないように注意するのは専用レンチも同じ。
これら以外にもアイデア次第でまだまだ使い方があると思います。
総括
力をかける作業で小さな部品をしっかり挟むという一点のみに特化した超ニッチな工具なので、製作工程での出番はそれほど多くありません。でもニッパーベースの工具なのでピンセットのように先端の合いがだんだん鈍る事なく半永久ですので、あとは各自がその用途だけに2000円強の価値を感じられるかどうかですね。
こういう大量生産したら赤字になりそうな小回りの利くツールを製造販売出来るのは、手作り少量生産の小さなメーカーならではの強みでしょう。ただそれゆえ売り切れたからといってすぐに補充されるアイテムでもないので、タイミングによっては手に入にくい時があるのは難点です。
またこのニッパーは通販だけでなく一般流通にも流されてるので、小売店でも入手可能になっています。
(2014/05/31)
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