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ゴッドハンド メタルラインニッパー
模型金属線材用ニッパー / メタルラインニッパーの特徴 / 性能比較検証 / メタルリギング(鮎釣り用金属)の切断 / メタルラインニッパー・マイナーチェンジモデル(2014/11/08) / 総括
※太枠の画像はクリックで拡大します。

抜群の切れ味を誇るアルティメットニッパーで知る人ぞ知る工具メーカーのゴッドハンドから、メタルラインニッパーという模型用金属線材に特化したニッパーが先日新発売になりました。


金属線切断用だけあって刃の部分がアルティメットニッパーより二回りほどごついです。刃先保護キャップ付き。持ち手はより手になじみやすいアルティメットニッパー・デュアルグリップと同じタイプになっています。
(三次生産分からは材質の見直しで刃の耐久性が向上し、グリップ色がワインレッドに変更)

ブログのほうでニパ子様やアルティメットニッパーを何度か取り上げたことがきっかけで、ゴッドハンドの中の人と面識が出来まして、このメタルラインニッパーの開発にあたり、対象線材の助言とかで私も少しだけお手伝いさせていただきました。

で、そのお礼という形で製品サンプルを提供していただいたので、実際のところどれくらい切れるのかレビューします。




模型金属線材用ニッパー
模型用としての金属線材用ニッパーに求められる性能は、よく使われる真鍮線、洋白線などが問題なく切れる事、そしてその切断面がキレイな事。

ディテールアップやスクラッチビルドの時に使われるそれは、普通の部品同様切り口が表から露出したり接着面になる事がよくあるので、ここを平らに処理しないと手抜き丸わかりの雑な作品になってしまうからです。


またディテールアップを行わなくても、金属線は折れた部品の補修やフィギュアの関節をつなぐ継ぎとして使ったりもします。
そのときに断面が押しつぶしたような形だと径が横に広がるので部品に開けた穴に通らないという事態が発生します。


断面の処理作業とは、具体的には耐水ペーパーやヤスリで研磨する事になるのですが、細い線材はその際にうっかり曲げてしまう事が多々あり、この作業が不要あるいは簡単にすませられれば、製作時間の短縮や失敗によるストレスの減少になるというわけです。



金属線カット用のニッパーはもちろん既存品であるんですが、それらの中で模型用品として流通してる物は意外に少なく、私の知る限りこのくらいです。しかもWAVEのはこの1年以内に発売されたばっかで、それまではミネシマ製の一択でした。


WAVE HT-254 HG金属線用ニッパー2.0
製品名はニッパーだけどケーブルカッタータイプの切断工具で、ハサミのようにねじ切る方式。お手頃価格。
切断能力:真鍮線:直径2.0mmまで (推奨) 、アルミ線:直径3.0mmまで (推奨) 、ワイヤーロープ:直径2.0mmまで (推奨) 台湾製。
WAVE HT-255 HG金属線用ニッパー 1.0
HT-254のコンパクトタイプでより細い線材用モデル。
切断能力:真鍮線:直径1.0mmまで (推奨) 、アルミ線:直径2.0mmまで (推奨) 、ワイヤーロープ:直径1.0mmまで (推奨)
ミネシマ ハードマイクロニッパー D-20
模型用線材としては最も固いピアノ線にも対応したニッパー。
切断能力:ランナー:4.0mmまで、ピアノ線:0.5mmまで、鉄線:1.6mmまで
【リンク先: Amazon ホビー



上記の製品が出る前の話ですが、老舗模型店で業界重鎮クラスの店長さんに、金属線を切るのにどのようなニッパーを選べば良いのかと伺ったところ、切れ味の落ちた模型用古ニッパーを使いつぶすのが現実的との回答をいただいた事がありました。そういう認識なので金属専用ニッパーを置いてない模型店や家電量販店は現在でも多く、欲しくても知識不足でどれが模型に適してるのかわからなかったり、もしくはその存在自体知らないモデラーも少なくないと思います。

そんな話をゴッドハンドの中の人にぼやいてたところ、隙間商品として今回のメタルラインニッパーが企画されました。




メタルラインニッパーの特徴
ニッパーは切断工具として「大は小を兼ねる」という理屈が当てはまらない代物で、「硬い」「太い」線材を切れるようにすれば「細い」「柔らかい」物の切れ味が落ち、逆に「細い」「柔らかい」物を切れるようにすれば「硬い」「太い」物を切れなくなるのだそうです。そのためどの線材のどの太さが最も良く切れるという刃のヤマを設定する必要があるのです。

ただ模型はスケールやジャンルが多岐に渡るため、使われる金属線も鉛筆芯並みの太さから髪の毛以下の細さまで数多くあってどこにベンチマークを置くのかが難しい・・・。


なので切れさえすれば何でも良いというのならともかく、切断面の平滑さにこだわるなら上記のWAVE製品のように用途ごとに数本の切断工具が必要となってしまいます。



で、このメタルラインニッパーはその解決策として、刃の前半分が0.5mm以下、後ろ半分がそれ以上用という異なる刃付けがされており、結果これ一本で大抵の太さの金属線材に対応できるようになってます。

最初このアイデア聞いたとき、そんな事可能なのかー?と思いました。



刃を裏側から見たところ。

いくつかの刃紋が交差しており、素人目にはわかりませんがどうも場所により刃角を微妙に変えてあるのかな?

太さによって切る場所を分けたのはそういった理由以外にも、先端を酷使して細い線材が切れなくなるのを防ぐ意味合いがあるのだそうです。
切断能力は
  • 洋白線:直径2.0mmまで
  • 真鍮線:直径2.0mmまで
  • 銅線:直径2.0mmまで
  • アルミ線:直径2.0mmまで
  • メタルリギング(鮎釣り用金属糸)各号
最高の切れ味を発揮するのは0.5mm真鍮線。
明記されていませんが、銅線(針金、より線)、アルミ線、糸はんだなど、洋白以下の硬さの金属線ならすべて切れます。

より硬い線材のステンレス線、ピアノ線も要望に入れましたが、切断面の質と刃もちの都合から対象外となりました。ぶっちゃけステンレスは切れない事はないけど、確実に切れ味が落ちるそうです。

他社製品でもピアノ線まで切れるニッパーは、代わりに切り口がどうしてもつぶれ気味になりますし、ゴッドハンドは高品質が売りの工具メーカーなので、自社のアイデンティティとしてそこは譲れなかったのだと思います。




性能比較検証
他の金属線切断工具と比較しながら切れ味を検証します。
エントリーさせたのは、金属線用ニッパーのツノダ・トリニティTM-01(左)と、タミヤ ピンセットペンチ(右)。
TSUNODA トリニティニッパー 120mm TM-01【Amazon】
性能の高さで定評のあるツノダ製の金属線用ニッパー。私の主力ニッパーのひとつで、これはリピーターになった2本目。
切断能力:軟鉄線:直径0.5mmまで、銅線:直径1.0mmまで 、より線:直径1.25mmまで、プラスチック:直径2.5mmまで。

タミヤクラフトツールシリーズ No.34 ピンセットペンチ 【Amazon】
根元の刃部分で切断可能。大抵の物は切れるけど、あくまでペンチであって切断専用工具ではないので切り口は大味。

どちらもおろしたてのほぼ新品状態です。
手持ちの真鍮線0.2〜1.5mm径をカットして、その切断面の平滑さを比べてみました。


0.2〜0.5mm径ではメタルラインニッパーの性能が抜きんでており、0.6mm以上はTM-01と互角の勝負です。
TM-01は銅線の切断限界力が1.0mmなので、それより硬い真鍮線の1.5mmは切れません。
ピンセットペンチはもっと太くても大丈夫ですが、ご覧のとおり押し潰したような断面でニッパーとは勝負になりませんでした。





洋白線は手持ちに0.3mmのみあったので、これも両ニッパーで切ってみました。結果は真鍮線と同じくメタルラインニッパーに分があります。

ちなみに線材の硬さは、

銅線 < 真鍮線 < 洋白線

となっています。





メタルリギング(鮎釣り用金属糸)の切断
艦船模型や大戦機の空中線用素材としてすっかり定着したメタルリギングへの切れ味を検証します。

メタルリギング(メタルライン)とは、鮎釣りに使われるニッケルチタン弾性形状記憶合金製の超々極細金属線で、直径わずか0.037〜0.09mm。模型とは全く別畑の釣り用品なんですが、黒鉄の重圧な質感と高い弾力性が注目され艦船模型の張り線素材として使われるようになり、今では模型用として流通している製品まで存在します。

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この細さですから切り口なんてルーペ使っても確認不可能なので、ここで求められるニッパーの性能は他の金属線材の場合とは全く異なってきます。
空中線は点と点をくっつけるので接着面積が極めて小さく、しかも切る時はその接着箇所にぴったり沿ってカットするためちょっと刃先がぶれただけでも引っ張られてプチンと外れてしまいます。なのでほんのわずかな力で一瞬で簡単に切れる事が絶対条件となります。もちろんこんな特殊な使い方を想定した専用の切断工具なんて超ニッチな代物は存在しません。


私はこの条件を満たす最適の切断工具としてタミヤの薄刃ニッパーを使っていました。

しかし薄刃ニッパーはタミヤに限らずどこの製品もプラスチック専用なので、超々極細のラインとはいえ金属糸への使用をメーカーが保証しておらず、それは刃の寿命を縮めるリスクがあるのです。

なので金属糸用として使いつぶすつもりで一本余分に用意してました。



テストに使用したメタルリギングは、
  • 0.06号(0.047mm): 1/700小型艦用
  • 0.1号(0.006mm): 1/700中型艦用
  • 0.15号(0.064mm): 1/700大型艦用
  • 0.3号(0.10mm): 1/350艦艇用
の4種類。
モデルカステン製品とあゆゲッターが混じってます。



実際に艦船模型に張ったのと同じ条件にするため2本の0.5mm真鍮線でスタンドを作り、そこに各々のメタルリギングを張りました。

これの接着部のキワぴったりの部分をメタルラインニッパーで切ってみて、そのときの感覚を検証します。



どの太さの線でも余分な力が加わったり刃先がぶれることなく、驚くほどあっさり簡単に切れました。私見ですが指先に伝わる感覚では薄刃ニッパーと全く差はなかったです。


実は言うと、メタルリギングのカットに関してはあまり期待してませんでした。金属線材を切るためのごついニッパーに、薄刃ニッパー並みの切れ味を求めるのは相反した話なので無理だと考えていたからです。

なのでこれは嬉しい誤算♪
メタルリギングの切断に、メーカーお墨付きの工具がついに誕生したのです!



ただし切れ味は同等でもサイズがタミヤの薄刃ニッパーよりだいぶ大きいので、奥まった部分や入り込んだ部分でのとりまわしやすさではタミヤに軍配が上がります。

この辺は2.0mm径金属線までカバーするニッパーなので、ある程度の刃長や押し切る重さが要りますから仕方のない事なのかもしれません。代わりに刃を痛める不安から解放されるのでイーブンですね。




メタルラインニッパー・マイナーチェンジモデル (2014/11/08)
発売開始から1年を過ぎ、2014年10月にメタルラインニッパーがマイナーチェンジしました。ベースを変えて一回り小さく軽くなり、握りやすさと取り回しが向上したとの事。

初回生産分のサンプルをゴッドハンド社から送っていただけました。


刃先のアップと、旧モデルとの比較写真です。
大きさはヘッドの小型化だけでなくグリップも細くなっています。個人的にはデザインは旧モデルのデュアルグリップのほうが鮮やかで好きだったんですけどね。横から見たら厚みも薄くなっており、持ってみると小さくなった代わりにグリップの開きが大きくなっているので、手の中での収まり感は良いです。そして旧モデルに比べてだいぶ軽く感じました。

ただ軽く感じると言ってもそれは個人の感覚なので、数値的にどれくらい軽くなったのかと公式ショップを調べてみましたが、特に何にも書いてありません。

そこで実際にデジタルスケールで測ってみたところ、旧モデルは68.2g、新モデルが61.9gでした。その差6.3gで、数字にするとそんなもんかと思いますが、体感的にはそれ以上なのは持った感触が小ぶりになったからかな?


サイズは小さくなったけど、以前と同じように艦船模型用メタルリギングから2.0mm径の金属線(真鍮線、洋白線、アルミ線)まで切れると仕様では謳われています。


そんなわけでまた真鍮線カットの旧モデルとの切れ味比較やりました。

結果としては同等の切れ味かと。




メタルリギングの使用感も試してみました。

ヘッドが小さく軽くなった分刃先がブレにくく、使いやすくなっています。今回のモデルチェンジで最大の効果はここですね。

ただこれでも狭い箇所のカットにはまだ大きいので、アルテミットニッパー並の小ヘッドの専用ニッパーを出してほしいところ。





総括
模型でよく使う金属線材をこれくらいキレイにカットできて、値段も安くはないものの2千円台とホビー用ニッパーの価格帯に収まっているので、これは今までありそうでなかった良商品ではないかと思います。
そうはいってもわずかながらも開発に関わったり製品提供を受けたのだから悪い事書けないだろ?話を盛ってるだろ?と思われたのならそれは仕方ありませんが、写真は嘘を付きませんのでそれをご覧になって後は各自判断していただければと思います。

ゴッドハンドは以前から模型用工具の分野にも積極的に打って出ようとしている節が見られ、市場のニーズを模索しているので、我々ユーザーから積極的に要望を出していけば今回のように製品化される事がこれからもあるやもしれません。

なお、このニッパーの名前の冠になぜアルティメットを付けなかったのか訊ねたところ、価格が高くなっても良いならまだまだ切れるようにできるのでアルティメットじゃないのだそうです。

(2013/08/29)
(2014/11/18 加筆)


メタルラインニッパーSWN-125 【Amazon】



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