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今から4年ほど前に買い揃えたハセガワ・トライツールのモデリングチゼルです。

それまでは道具に頓着せずにアートナイフとカッターナイフ、学校教材のなまくら彫刻刀ですべてをこなしてたのですが、場数をこなすうちに良い道具は良い物を作る近道だと考えが変わりました。特にピンセットと刃物は安物はダメ!
長らく使い込んで長所短所は把握しましたので、今更ながらその使用感レポートです。
モデリングチゼル 1 平 細 (TT4 ) 【Amazon】

全長約 14.0cm、刃先幅約1.0mmの超極細平刀で、表裏両面に刃が付いてます。柄はアルミニウムの削り出しで、グリップはラバーが被せてあるのですべりにくくて握り心地は良いです。

極細平刃なので取り回しが良く、アートナイフでは届かない狭く奥まった場所を彫り込んだり平らにするだけでなく、モールド再生などの色んな場面に使えて重宝します。
ノミですから押して切るのが前提の形なので力を入れやすく、表面を薄く削るのも深く掘り下げるものどちらも可能。プラやレジンなどの樹脂を削る分には切れ味は実に良いです。
アートナイフでは代用できない刃形状なので使用率高いです。
自分的あると便利度
    
モデリングチゼル 2 丸 細 (TT5 ) 【Amazon】

全長約 14.0cm、刃先幅約1.0mmの超極細丸刀。丸棒を竹やりみたいに斜めに鋭くカットした刃形状で片刃です。

断面がU字の丸刀ではなく尖ってるので鋭く刺さるかわりに、当て角を浅くしないと深くめり込みやすいです。
削った部分に1.0mm強の小さなRが付くので、入り組んだ曲面を彫るのに適しており、プラモデルのような直線的なものよりフィギュア造形に重宝しそうに思えます。
そんなわけで自分的には出番の少ないノミです。
自分的あると便利度
    
モデリングチゼル 3 三角 細 (TT6 ) 【Amazon】

全長約 14.0cm、刃先幅約1.5mmの極細剣先刀。直角二面に刃が付いてます。

直角を出す必要のあるL角面の切削や、V字溝の彫刻に使います。切削するので正方形棒ヤスリや目立てヤスリを使うより鋭くてこれ以上ないという位のL角面を出せます。
ただ先端が尖ってるため、左画像のように切削面に行き止まりがあると削りのこしが出来ますので、平ノミと併せ使うのが良いです。
自分的あると便利度
    
モデリングチゼル4 幅広3mm片刃平 (TT9 ) 【Amazon】

全長約 14.0cm、刃先幅約3.0mmの平刀。片刃です。

刃が広いので平面出しやダボ跡、ゲート跡といった凸部を削るのに使います。斜め刃のアートナイフでは滑ってたりずれたりして切削しにくいシーンでも、平刃なのでしっかり刃が立って正確に削り取ることができます。
私の場合、このノミが最も出番多いです。
自分的あると便利度
    
モデリングチゼル5 模型用ノミ丸平 (TT19) 【Amazon】

全長約 12.5cm、刃先幅約2.5mm、先端を丸くした平刀で「カマクラ」とも呼ばれる彫刻刀。ハセガワ的にはモデリングチゼルとして販売してますが、デザインが同社のカービングナイフと同じなので、製造元はそちらと一緒なのでしょう。刃先に安全キャップが付いてるのがありがたい。

切削面がスプーンで削り取ったようなゆるい凹曲面になり、TT5丸細の幅広い版的な用途です。
他の製品と材質が違うためずっしりとした重みがあります(35g ・ 他製品29g)。滑り止めの溝はかなりエッジが効いていて、ラバーグリップ以上に滑り止め効果が高いです。
自分的あると便利度
    
サーフェスナイフ (TT31) 【Amazon】

全長約 14.0cm、刃先幅約3.0mmmm、「きさげ」と呼ばれる研削用両刃刀でパーティングラインとかを処理するのに使います。

他のノミが押し切るのに対して、これは切削面に刃を立てて横に引いてカンナのように使います。左右どちら側にも引けるよう両刃になっています。
用途としては最もアートナイフとカブるのですが、こちらは刃先や柄がしっかりしていてアートナイフみたくビビリが発生しにくく安定して削れます。
全然違うというほどでもないけど、購入以降この用途においてはアートナイフ使わなくなりました。
自分的あると便利度
    
モデリングスクライバー けがき針 (TT1 ) 【Amazon】

けがき針です。刃がないのでノミではないけど、溝を彫るという意味においては似ていますので一応・・・

BMCタガネやMr.ラインチゼルといった優れたスジボリ道具が登場した今日、溝の両側にバリの出来るけがき針がそれらより性能的に劣ってるのは否めません。
ただきつい曲線への追従性はどの方向にも削れるけがき針が断然優れており、特にテンプレートとの相性は抜群です。
なのでラインチゼルも後から「廻し彫り用」という針型替刃を発売していて、駆逐されるのではなく適材適所で共存しています。
またタガネやラインチゼルを使うにしても、このモデリングスクライバーで下彫りをしてから使う方が、より正確にラインをトレースしやすくなります。
こんなの縫い針をピンバイスで挟めば安上がりでいいじゃんと思いがちですが、実際に使い比べると材質の硬度が段違いで、溝の精度にそのままの差が出ますし先端の摩耗度も相当違います(しかも砥石付なので研げる)。やはり値段差分の価値はしっかりあるのです。
自分的あると便利度
    
つーか、ないと困るわ!星6つでも良いくらい。
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感想
どのタイプの刃にも言える感想です。
- 切れ味: 良い!文句なし。
- 切削感: ノミなので強い力を加えても刃がヨレたりしなったりせず安定してる。
- 耐久性: アートナイフ、カッターナイフより刃が硬く、切れ味が長く持続する。
ホビー用とはいえ一本1,575円もするんですから、価格なりの性能はありました(これで100均のアートナイフと同じだったら暴れるわ!)。素組み以上の工作をする人は持っていれば何かと便利で、ハズレアイテムではありません。
ただ私みたいに人柱として全部買い揃えると出費もバカにならないので、自分の用途に合った刃をチョイスして購入したほうが良いです。
またモデリングチゼルには砥石が付いていて(TT19を除く)、切れ味が落ちてきたら水研ぎする事で何度でも復活できます。実際研いでみたら新品の時よりさらにサクサク削れるようになってびっくりしました。
ただパッケージには研ぎ方はおろか説明書や注意書きのひとつも入っていません。平刀はともかく丸刀の研ぎ方なんてわからないのでネットで調べてみたところ、以下の専門店が研ぎ方をわかりやすく載せていました。
刃研ぎは、良い道具を常に良い状態に保つため自分でメンテする職人的な楽しさも併せ持ちます。
ただお手軽ということでは、刃をどんどん使い捨てられるアートナイフやカッターナイフのほうがはるかに楽で万人向けです。
元より値段自体が使い捨て価格ではないので、これは長く大事に使いたい人向けの道具ですね。
短所
この製品には刃先に鞘とか保護キャップが付いてませんので、そのままペン立てとかに挿したり筆箱に入れたりすると危険です。
かといってパッケージがケース代わりに使えるかというと、出し入れが面倒な形でしかもかさばるし微妙なところです。
なので私はビニールチューブやタミヤ精密ドリルの単品ケースを挿して代用しています。
ただどれも見映えやピッタリ感がイマイチなので、。裁縫できる人は自分でのみ袋作った方がよいかも。
ハセガワはタミヤと並んで細かいところに気配りのあるメーカーと思ってたので、ここの見落としは残念です。

またモデリングチゼルは柄が丸いので転がりやすく、机から落としたりすると刃先の破損だけでなく足に刺さる危険もあります。
対策として柄の端に穴が開いていますので、そこにキーリングやストラップを付けたり、あるいはもっと簡単な方法としてテープを巻いてタブを作るなどで転落を防止できます。
最後に、アートナイフ、カッターナイフはモデリングチゼルの代わりになりませんが、モデリングチゼルもアートナイフ、カッターナイフの代わりにはなりません。互いに得意不得意な部分があり、どちらかがあれば良いというものではないです。
競合製品
彫刻刀で調べるとかなり広範囲になるので、ホビー用精密刀という括りでリストアップしました。
※リンク先 : Amazon・ホビー
アイガーツール・マイクロナイフ
ミネシマブランドで、モデリングチゼルのOEM元では?と勘ぐるほど酷似している製品。材質は硬度HRC60℃の炭素工具鋼SK-5。モデリングチゼルと比べるとラバーグリップがない代わりに柄に革製ストラップが付いてます。刃の種類がモデリングチゼルより多く値段も少し安め。パッケージ見る分には砥石は付いてないみたい。
GSIクレオス・Mr.精密彫刻刀
同社の人気商品Mr.ラインチゼルと同じく刃先交換式の彫刻刀。実際に使ったことないので性能はわからないけど、数を揃えるならこちらのほうが安上がり。柄に転がり防止タブが付いてます。材質はMr.ラインチゼルと同じく炭素鋼で、焼き入れ痕が目立つので刃物としての美観は他社製品に劣ります。

オルファ アートナイフプロ平刃 XB-157H
オルファ製アートナイフプロ用の平刃型替刃。10枚入り使い捨てタイプです。材質は合金工具鋼、刃厚:0.55mm刃幅8.0mm
 
ガイアノーツ・マイクロセラブレード
サーフェスナイフの競合品でセラミック製のきさげ。刃の両端に直刃と丸刃の二種類が付いていて、差し替えて使います。セラミックなので刃の摩耗が金属刃とは桁違いに少なくメンテフリーでも切れ味がほとんど変わりません。かわりに衝撃に弱くて、落とすと陶器のように欠けたりします。なのでスペア刃も追加発売されました。(G-13 マイクロセラブレード替刃)
 
(2013/05/29)
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