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針のような細く鋭い刃先が回転してキレイな自由曲線を切り抜けるというエアテックスの「くるりんカッター」。
エアテックスは元々ファッションアート関係にエアブラシ用品を製造販売してるメーカーで、このくるりんカッターもネイルアート用のステンシルを切り抜くためのツールなのですが、それがマスキングシートやデカールの精密な曲線切り抜きにも使えるという触れ込みで、最近は大型模型店の棚にも並んでいます。
ネイルアートの世界ではプロも使ってる道具だそうで定価4305円とお高い!情報収集しようとネット検索してみましたが出てくるのは業者サイトもしくは買いました報告程度でマトモなレビューが見つかりません。
なのでここは久しぶりに人柱になってみました。
各部クローズアップ
こんな風に筆箱のような透明ケースに入っています。替え刃3本付き。
元来女性向けの製品だけあって名前がカワイイけどデザインもオシャレで、軸は滑り止めローレット加工されたカラーアルミ製。写真ではわかりにくいけど実物は宝石みたいにキラキラ輝いています。自分はブルーを選びましたが、他にもバイオレット、レッド、イエロー、グリーン、ブラックの計6色用意されています。


刃の受け軸はクロームメッキ加工で、斜め角度の付いたクランクが付いており、これが曲面に合わせて刃先を回転しやすくさせる仕掛けのようです。
先端はパイプになっいてここに刃を刺します。刺しやすいよう斜めカットされています。
実際は受け軸先端に保護用の透明ビニールチューブがかぶせられています。これは撮影のため取外した状態です。

付属の替刃。
密封式ケースのグリスに刺してあり、直径は計測してみたところ、0.5mmでした。

受け軸に刃を刺したところ。
この刃の部分のみが曲線に沿って可動するので、グリスは十分に塗っておきます。
刃先は鋭くて細く小さいので、うっかり指を突いたり床に落として紛失しないよう細心の注意を。
取扱説明書は、ビニールパッケージの裏に貼ってあるシールのたったこの一文のみ。
定価で4000円以上する代物でしかも特殊工具なんだから、使い方をもう少し詳しく説明しないとダメだろう。


で、またあちこち調べた結果、エアテックス公式サイトのデジタルカタログにあるネイルアートの項目に使い方が載っていました。
でも写真と文字も小さいうえに文字色がパステルカラーなので老眼のおっさんにはめっさ読みにくいです。デザイン性より見やすさを優先してくれ!(>_<)
※エアテックスデジタルカタログ
http://www.airbrush.co.jp/catalog/vol12/top.html
↑ここの14ページ目
ネイルスターターキットを使ってオリジナルマスキングを作ろう!
マスキングフィルムとくるりんカッターの使い方
実践
そんなわけで実際に使ってみました。
ハセガワトライツールのテンプレートセット1の円部分でマスキングシートをカットしてみます。直径0.5mmから9.5mmまで0.5mm間隔の大きさで19個の円が開いています。

本当はこういう専用のカッティングガラス台のような硬いものの上で切るのが良いらしいのですが、今回は普通にカッティングマットの上ということで。

基本鉛筆持ちでラインをなぞるのですが、軸受がクランク型なので違和感があり、刃がちゃんと回転せずに切り損ねたり、カットラインにひっかけ痕を付けたりして、コツを掴むまでそれなりに練習を要しました。
具体的には刃先がテンプレートに追従しやすい角度や力の入れ方があるんですが、切り出してる箇所によってそれが随時変化するので、言葉で説明するのはちょっと難しいです。
またカット中は刃がテンプレートに引っかかっている感触があり、こうした使い方は刃を痛めやすいのかもしれません。カッターナイフやアートナイフの替刃のように気軽に使い捨てられる値段じゃないので(3本入り定価2415円)、ピンバイスにかませて砥石で研ぐとかのメンテを自分でやるようにしないと、とんでもない金食い虫になりそうです。
こうして切り抜かれたマスキングシート。さすがに最小の0.5mmは無理でした。

切り口の滑らかさはこんな感じ。お高いだけあって確かに線のヨレもほとんどなくキレイにカットできています。円の直径は7.0mmから8.5mmのところ。ただし3.0mm以下では私の腕が足りないのか刃の追従性の限界なのか、実用レベルではありませんでした。小径の真円ならモデリングポンチで打ち抜いたほうが手っ取り早いです。もしくは規格の寸法ので最初からカット済みの製品もあります。

実際に切ってみて、販売元のエアテックスが下敷きに専用のガラス板を推奨する理由がわかりました。普通のカッテイングマットだと柔らかいので刃先が引っかかったり刺さったりしてうまく回転しにくいのですが、ガラス板ならそれがないし、刃のすべりもよくなってさらにカットラインをトレースしやすくなるのでしょう。
ガラス板なくてもアクリルサンデーみたいな硬質アクリル板でも代用できそう。プラ板は柔らかいので多分ダメでしょうね。
アートナイフとの比較

次に性能比較ということで、アートナイフで同じようにマスキングシートを切ってみました。
製品はオルファ製アートナイフ 10B。最も一般的で、おそらくモデラーの誰もが持っているであろう道具です。
やってみると案外そこそこ程度のレベルに切れました。まあアートナイフは使い慣れてるし・・・パッと見はくるりんカッターと大差ない感じです。

でもアップにすると、やはり線の滑らかさが違います。直径7.0mm〜8.5mmでこの調子ですから、これより小さいのはさらにRがきつくなって線のガタが目立ちます。

感想
感じとしては、5mm径の円と同じくらいの曲線まではキレイにカットする事ができます。それよりきついRにはさすがに精度を維持できませんでした。(ただしガラスマットを使えばさらに踏み込める可能性あり)
また本来の用途であるネイルアートのステンシルのように自由曲線をフリーハンドでカットする場合においても、アートナイフより自然で滑らかなラインで切り抜く事ができます。なので模型ではウインドウシールドや迷彩塗装のマスキングにおいて今までより一段上のレベルの仕上がりを期待できます。
しかしそれはこのカッターをちゃんと使いこなせてるのが前提の話でして、誰もが簡単にキレイな曲線を切れるわけではありません。また使いこなせたとしても、マスキングシートやデカールをキレイに切るためだけの工具にこの価格が適正かどうかというと、一般的な感覚では割高感は否めません。
このくるりんカッターが高価な理由として、超小型の回転刃をスムーズに機能させるための高品質設計以外に、女性ウケを狙ってローレットカットを施すなど嗜好品の要素も取り入れた美しい意匠が施されてる事もそれなりに占めてるように思います。それが必要かどうかは別として、確かにタミヤやクレオス製品とは一線を画す質感です。
ネットで価格を調べたところ、Joshin webが売価3000円送料無料(ただし期間限定)で実際の支払価格が最安値だったので思い切って買いましたが、4000円だったら躊躇してました。手先が器用で道具に出費を厭わない人向け。
 
エアテックス くるりんカッター CRC4 ブルー 【送料無料(期間限定)・Joshin
web】 ※他の色は こちら
エアテックス くるりんカッター 専用替刃 ※3本入り 【Joshin web】
競合製品
調べてみたら全く同じではありませんが、用途として重複する製品がいくつか見つかりました。
いずれも刃先が回転する仕組みです。
SW-600GPとCK600は刃がデザインナイフなので、くるりんカッターほどきついRには対応できないように思いますが、価格が手頃で現実的です。
ローリングスリーブカッターは刃の直径が同じでかなり似ており、これの刃先が回転しやすいように軸受をクランク型にしたのがくるりんカッターのような気がします。
ただどの製品の購入者レビューも扱いには慣れがいると口を揃えており、いきなり簡単に曲面カットできる工具は今のところ存在しないみたいです。
(2012/08/05)
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