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エッチングパーツは艦船模型をリアルに見せるのに有効なディテールアップパーツで、その中でもポピュラーなのが手すりです。手すりは人との大きさを比べやすい装備品なので、実物の巨大感と模型の精密感を演出するのに大変有効です。

手すりの種類1 (取付け方法)
取付け方法で分別すると、手すりパーツには『上付け型』と『横付け型』の2種類が存在します。
■上付け型
甲板や構造物の上から取り付けるタイプ。
パーツの底部にタブ(接着しろ)が付けられており、ここを折り曲げて瞬間接着剤で甲板などに取り付けます。見映えより扱いやすさを優先しており、プラモデルメーカーからリリースされてる製品に多いです。
具体的な製品例を1/700であげると、
の手すりが該当します。
エッチングパーツ付の限定モデルであるスーパーディテールと呼ばれる製品に付属している手すりもこのタイプが多いです。

仕上がりをさらに良くするには、タブを切り取って甲板などのパーツにピンバイスで穴を開け、そこに手摺りの支柱をじかに埋め込む方法があります。
ファインモールド製品は最初からこの方法も配慮して設計されており、タブとタブの間にある支柱は埋め込み用に長くなっています。タブを使う場合は他の支柱と長さをそろえてカットして使用します。
※左画像をクリックすると説明書の拡大画像をご覧になれます。

タブを切り取って取り付けると抜群に本物ぽく見えます。なんせ本物と同じ付け方ですから。
ただしこの方法は、ピッチ(支柱同士の間隔)に合わせて正確に穴を開けないと差し込めなくなってしまいますし、ピッチが合っていても同一直線上からずれてしまうと、今度は左右にヨレてしまったりと、手すりの取り付け方法として扱いにくさはダントツで上級者でないと手に負えません。
上手く付けるコツとしては、差込用の穴を一回り大きめに開けて取り付けにある程度の遊びを設けてやり、手すりを差し込んで位置決めができた後に、瞬間接着剤や溶きパテを(可能なら裏側から)穴の遊びに流し込んで埋めます。
■横付け型
甲板や構造物の側面から取り付けるタイプ。
手摺りの一番下のライン(日本海軍用なら三段目、米海軍・現用艦用なら四段目)が接着しろになっており、ここをキット側の側面に取り付けます。
そのため曲面にもなじみやすく、舷側を正確にトレースしたラインを出せるのが長所。
具体的な製品例をあげると、
の手すり該当します。
扱いやすさより見映えを優先しており、マニア向けらしくディテールアップパーツ専門メーカーの製品に多いです。
(スケール:1/700, リンク先:模型・ホビーのノースポート)

取り付け方の一例としては、まずゼリー状瞬間接着剤で側面に点付けし、次に液状瞬間接着剤をアートナイフなど細い尖った物の先に付け、手すりと側面の隙間に流し込んで固定すると強力に接着できます。
最後に600〜1000番くらいのサンドペーパーをかけて、はみ出した瞬間接着剤を削り取ります。
手すりはいっぺんにではなく、端から少しずつ接着したほうがずれにくいです。
また横付け型の場合、どうしてもエッチングパーツと側面との間に段差や合わせ目が出来てしまいます。気になる人は溶きパテを合わせ目に盛って、サンドペーパーをかけてやればキレイに仕上がります。
合わせ目を消したかどうかはパッと見ではわかりませんが、よく見れば仕上がりの差はやはり現れます。
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合わせ目を消してない場合 |
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合わせ目を消した場合 |

横付け型の手すりは上付けを出来ないこともありません。(ただし手すりの一番下のラインの接着しろの分だけ上げ底になります)。
ただそのまま上付けしたのでは接着面積が少ないため強度的に不安なので、真鍮線で補強するという手もあります。
取り付け箇所に0.2mm真鍮線を支柱の位置に合わせて適当な間隔で埋め込んで、真鍮線が支柱で隠れるように手すりを接着します。

真鍮線も0.2mmの細さなら裏側から見てもほとんど目立ちません。
さらに支柱だけでなく手すりパーツ底面と舷側を接着すればもっと頑丈になります。画像の作例はさらに合わせ目消しも行っています。

もしくは手すりをランナーごと切り取り、これを差込ピンとして使う方法もあります。
このランナーの数が少なくて取付けに強度不足と感じる場合は、真鍮線をいくつか足して補強してやります。
個人的には横付け型のほうが見映えと扱いやすさのバランスがとれていて好みです。
手すりの種類2 (用途)
日本海軍の手すりの規格は単一でなく用途によって分けられており、現在のエッチングパーツの手すりはその形別に製品化されているものもありますので、細部にまでこだわる人は資料写真などを見ながら使い分けると良いでしょう。
■チェーンタイプ

支柱の間をチェーンでつないだ折りたたみ可能な手すり。主に舷側に設置されていていましたが、艦上構造物にも部分的に使用されていました。
このチェーンのたるみを表現したエッチングパーツが製品化されています。
■鉄棒タイプ

鋼管で作られた固定式の手すり。主に艦橋などの艦上構造物に設置されており、場所によっては乗員保護のために上から白いキャンバスで覆われてました。
エッチングパーツではチェーンタイプのようなたるみ表現がされていません。ちょっと前まで手すりパーツはこのタイプしかありませんでした。
■その他のタイプ
- 一段手すり(機銃・探照灯台周りなど用)
- ピッチが狭い手すり(小艦艇用)
私が知っているのはこのくらいですが、まだ他にも種類があるかもしれませんし、今後も新製品が登場するかもしれません。
手すりの扱い方
■カットの方法

アートナイフを使って押し切ります。
下敷きはカッティングマットやプラスチックのような柔らかいものだと切り口が曲がってしまいますので、アクリル板が刃先も傷みにくくて適しています。
ナイフの刃は新品でなくても切れますが、刃こぼれしていると切れ味が鈍ってやはり切り口が曲がってしまいますので、ケチらずに早め早めに取り替えたほうが良いです。

また専用品として『エッチングばさみ』というツールがあり、これを使うと正直ビックリするくらい簡単でキレイにエッチングパーツを切り離せます。
ただしハサミという構造上、入り組んだところに使うとパーツをこねてしまうことがありますので、アートナイフと使い分けるのが良いでしょう。
金属を切るハサミですから普通の刃物より寿命が短かく、使い続けているとだんだん切れ味が鈍ってきます。カッターのように気楽に使い捨てれる価格ではないのが短所。
また私は使ったことありませんが、エッチングニッパーという製品もあります。
■曲げ方1(直角曲げ)
エッチングパーツをキレイに曲げるには、エッチングプライヤーという専用治具が便利です。刃物じゃありませんからほとんど損耗しませんので一度買えば一生モノです。

手すりをしっかり挟み、プライヤーのカドを利用して根元から曲げます。
エッチングパーツは一度曲げてしまうと折り目が付くのでやり直しが効きませんから、取付け箇所に何度も仮合わせして、曲げる箇所を間違えないように慎重に作業します。

複雑な形の部分に取り付ける場合、1枚の手すりで同じ形をトレースするのは無理がありますので、何枚かに分割して曲げたほうが失敗も少なく結果的にもキレイに仕上がります。
分割ポイントは谷折り部分に合わせると、継ぎ目が目立ちにくいです。
■曲げ方2(曲面)
艦首や艦尾、銃座など曲面に手すりを取り付ける場合、筆やボールペンなどの丸い棒に巻いて癖を付けます。金属の弾性により巻き癖は少し元に戻りますから、取り付け箇所より1〜2回り小さい円形の物を冶具に使うようにします。
(2002/08 初公開)
(2007/09/16 加筆)
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