プラモデルの展示、作り方解説、アイテム情報とか
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川崎重工創立120周年記念展 飛燕2型改 試作17号機
2016年10月 撮影:管理人おまみ



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2016年10月15日から11月3日まで神戸ポートターミナルホールで開催されていた川崎重工創立120年記念展に行き、会場内に展示されていた旧日本陸軍の戦闘機飛燕を見学してきました。

 会場で配布されていたパンフ(表面)    会場で配布されていたパンフ(裏面)



全体画像
この飛燕はI型より高出力エンジンを積んで機体を強化したII型量産機のベースとなったII型改試作の17号機(6117号機)と呼ばれる個体。戦後米軍に接収されて横田基地に展示されていたおかげで廃棄を免れ、返還後はあちこちのイベントを転々して近年では知覧特攻平和会館に展示されていた国内唯一の飛燕です。

長い年月によって機体の損傷や部品の欠損があるため、今回のレストアプロジェクトはそれらの単なる修復作業ではなく、文化財・航空遺産としてその正しい姿を後世に伝えるために、
  • 戦闘機として戦後を迎えるまでの情報が重要なので、その役割を終えた時点を基準とする。
  • オリジナルの姿に負担をかけないため、展示などのために戦後付加された部品や塗装は取り除く。
  • 大きな欠損部分に関してはレプリカ部品で補う。
という方向性で行われたようです。
なので会場ではほぼ金属の地金の姿で展示されていました。

入り口を通って会場に入上に入ると最初に見える飛燕の左側側面。 会場2階から -その1- 会場2階から -その2-


会場2階から -その3- 会場2階から -その4- 並べて展示されているNinjya H2R


後方から 飛燕の修復の考え方を解説したパネル 修復・復元箇所の説明パネル




各部クローズアップ

エンジンカウル左側。水冷式なので空冷のように機首正面に大きな吸入口がなく、ノーズの尖った美しい形に。 V12気筒のため片側に6つずつ並ぶ排気管整流器。真ん中に溶接の合わせ目発見。その下には3本のカウルヒンジが。 過給機の吸入口。エンジン左後方に付いている装置なので右のカウルにはありません。内部に整流板を確認。


プロペラ、スピナー部分。「川崎グリーン」と呼ばれる濃緑色が再現塗装されています。 スピナーはジュラルミン製、空力を良くするため、接合は沈頭鋲が使われています。 機首右側。左側とパネルラインやリベット部分に若干の違いが見られます。


エンジンカバー上部の復元解説。復元前に付いてた複製品はオリジナルと設計が違っていたので正しいのを新造したとあります。 飛燕の左側に設置されていたエンジンカバーの位置を示す写真パネル。親切。 黒く塗られているのは反射防止塗装といって、太陽光が反射したり、風防に写り込んで視界を妨げないようにするための物。


エンジンカウル上部にある2つの穴は、20mm機関砲の弾道スリット。 ここにも開閉用のヒンジもしくはロックピンらしき物あり。数か所ある細長い金具がそれ。 風防もやはり今まで付いていた複製品は品質が粗悪で、それをオリジナルに近い形で修復・交換するのは大変な作業だったとあります。


飛燕の左後方に設置されていた、風防の位置を示す写真パネル。 コクピット正面の計器類はすべて取り外されており、会場内に別途展示されてます。 正面風防ガラス枠は、腐食が激しくて作り直したそうな。


風防枠正面の左端にある丸い膨らみとその中の穴は、操縦席への空気取り入れ口。今まで塞がっていたのを今回復元。 風防上面の曲面パネルの製造と、薄い板の風防枠との鋲留め作業は達人級の職人技が必要だったとあります。 操縦席のヘッドレスト、上部防弾板も復元品。その後ろに酸素タンクを確認。


胴体、主翼、主翼基部、冷却器覆それぞれの鋼板の重なり方がよくわかります。 日の丸は塗装でなくラッピングによる再現。展示終了後は剥がすそうな。 尾翼の方向舵と昇降舵が新造されてます。ここは羽布張りなので仕方ない。


右胴部は他所に比べて外板の凹み歪みが極めて少なく、きれいな状態を保ってるように見受けられました。 対して尾翼は、特に基部の補強用に重ねて被せられてる外板の波打ちが激しいです。 左主翼に搭載されている着陸灯。海軍機にはない陸軍機特有の装備。


主脚カバー部。脚暖衝標識「最大緩衝」の痕跡があるとの説明でしたが、この写真からは伺えず。 主脚内側。飛燕のタイヤサイズは600x175と小さめで、直径310mmのホイールはアルミ製。 主脚収納庫。主脚カバー先端側の引き込み装置は、主脚に押されてカバーが閉じる方式。


主翼下部には、12.7mm機銃の機銃口からの延長先に、薬莢の排出口らしきものが確認できます。 水冷エンジン故存在する胴体下部の冷却器覆。正面に格子状の整流板が付いています。 冷却器覆を後ろ側から。内部の冷却器(ラジエーター)は取り外されて、傍らに単体展示されています。


右主翼を2階から撮影。ここでも動翼部分は新造されてるのがわかります。 主翼表面はアップで見ると、想像よりはるかにベコベコ。そして凹み部分や沈頭鋲まわりに塗料わりと残ってます。 左主翼下部に何かを吊るすフック発見。その後ろの水滴型の膨らみは、補助翼を動かすヒンジのカバー。


翼端灯はこれまで主翼と面一形状とされていましたが、今回水滴型で復元されていました。左翼用なので赤色。 対して右翼端灯は青色。 ピトー管も新たに作り直されたもの。


アンテナ柱。碍子が付いてたり、その後ろでアンテナ線が2つに分岐してたり、模型的に良い発見。 垂直尾翼側のアンテナ柱ディテール。こちら側は碍子が2つ。 尾輪。支柱に丸いフックが付いており、これも新たな発見。





展示機器類
飛燕の周囲や壁面に展示されていた 機器類です。


修復の調査として、英国空軍博物館の五式戦が最大の情報源となり、他にも三沢航空科学館の一式双高練、豪州の三式戦I型などを調べたたと書かれています。 計器盤の復元作業の詳細。搬入時にオリジナル計器はほとんど残されてなく、譲渡やネットオークションでの購入、取材によるレプリカ製作で再現したとあります。 取り外して展示されていた計器盤。デザインには変革があるので、飛燕I型、II型、五式戦の資料を調査して、このII型17号機はI型と五式戦の中間の形態と判明。

計器まわりの銘板は、実物写真をトレースして再現。4連の色付き銘板は、I型の実物調査により色合い、文字、目盛りも再現してあるとの事。 飛燕のコクピットモデル。子供や若者より戦時下を体験されたと思われる軍国少年世代の年配の方が多く並んでいて、楽しそうに記念写真を撮られていました。 座った時の視界や広さを体感するのが目的なので、計器類は描き割り、操縦桿は金属製ですが床にしっかり固定されていて可動はナシ。


座席から見える視界はこんな具合で中はやや窮屈。精密再現が目的の模型ではないとはいえ、目の前に照準器と機関砲がないのがちょっと残念です。 水・滑油冷却器の復元解説。試作17号機はこの部分が失われており、資料や情報も少なくて最も苦労した箇所の一つで、復元に約2年かかったとあります。 復元された冷却器。滑油冷却器を中央に配し、その左右を水冷却器が挟み込む構造。コアがそれまでの扁平六角形から冷却効果をアップした正六角形に変更されており、左側にある機器はその一部。


向かって左の配電盤は、操縦席前方右下に設置されていたとあります。そして右の一枚板が操縦席の防弾版で、銀色の穴あき金属板はその取付機構です。 飛燕II型に搭載されたハ140発動機。I型用ハ40発動機と同排気量ながら各部に改良を加えて高高度高出力化を実現した航空機用液冷倒立V型12気筒エンジン。 倒立型エンジンなのでクランクシャフトが上、シリンダーが下で逆さまになっています。


この個体は試作17号機に搭載されていた実物で、始動装置や燃料噴射装置などの補機類がほぼ完全な状態で揃っていたとあります。 後部に集中する補機類。ネームタグには点火発電機12極三型、慣性始動機、吸気ポンプ、オイルフィルター、高高度調整器などの文字。 エンジンブロック左後方にある空気吸入口(黒くて丸い部分)。ここにハ140用過給機が取り付けられてたんですが、このエンジンのは欠損していたそうです。


ハ140過給機の解説。飛燕I型用のハ40過給機とは違う設計で、現物も図面も現存していないため、さまざまな資料を集めたり、ドイツ製過給機を調査して全貌を解明したいきさつが書かれています。 分析調査に使われたドイツ製エンジン「ダイムラー・ベンツDB603」の過給機の実物。飛燕I型用ハ40エンジンのオリジナルであるDB601の拡大版なので、ハ140と同じ立ち位置にあると言えます。 調査の結果に製作されたハ140過給機のモックアップ。排気圧を再利用するターボではなく、エンジン動力でタービンを回すスーパーチャージャーモデル。


川崎航空機明石工場が戦時下に作ったジェットエンジン「ネ」シリーズについての解説。3種類のエンジンを設計、試作、地上運転試験まで実施したとあります。 試作ラムジェットエンジン「ネ-0」を胴体下に搭載したキ-48U型双発軽爆撃機の模型。1943年12月23日各務ヶ原飛行場において、着火、燃焼による噴進飛行を実施。 飛燕レストアプロジェクトに協力した企業・団体リスト。歴史遺産の復元という宮大工的事業を支えた日本の町工場の技術に拍手!そしてそれらの中にタミヤの名前も。





Ninja H2Rなどカワサキ製バイク
最速への情熱と過給機技術の継承という意味を込めて、同じくスーパーチャージャーを搭載したカワサキ製最新・最速のバイクであるNinjya H2Rが、飛燕と並べて展示してありました。


飛燕と並んでる写真の中では、これがベストショット。H2RはカウルがH2の銀鏡塗装からカーボン素材をふんだんに使ったデザインに変更。 サーキット専用モデルという事でミラーの代わりにサイクロン号のようなウィングが付いており、サイドカウルの物と合わせて高速時のフロントのリフトアップを抑えています。 フロントカウル正面の2つの大きな穴は、スーパーチャージャーへ空気を導くデュアルラムエアインテーク。


大口径のダブルディスクを挟むBrembo製ブレーキキャリパー。ABSにはKIBS(Kawasaki Intelligent anti-lock Brake System)のロゴが見えます。タイヤはスリックタイヤ。 青や黄色に焼けた排気管は、思わずタミヤのキットでも再現したくなる色合い。マフラーカッターの形は、ストリート仕様であるH2のドデカイのと比べると全く普通。 300馬力オーバーのスペックを誇る998cc水冷4ストローク並列4気筒スーパーチャージドエンジンと、それを囲む鋼管トレリスフレーム。


出口付近のモーターサイクル展示ブースに展示されていた80年代の名車カワサキ・750ターボ。傍らの台にあるのは750ターボのターボチャージャーのカットモデル。 こちらのブースにもNinjya H2R(左)が、そのストリートモデルであるH2(右)と一緒に展示されていました。。 H2Rのフロントカウルの内側が見て取れるアングル。こちらの展示車は、飛燕の隣にあったのと比べてフレームの色や排気管の焼け方がだいぶ違います。





この日の顛末はブログに載せてあります。

《参考外部リンク》




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■プラモデル
タミヤ1/48 日本陸軍川崎三式戦闘機 飛燕 I型丁
試作2型ではなく1型だけど、2016年12月末に発売された現在において最新の飛燕の模型。統制型二型落下タンクと懸吊架、着座姿勢のパイロットフィギュア1体付属。マーキングには第244戦隊小林戦隊長機などの2種類、キャノピーマスクシールも付属。
  タミヤ1/12カワサキ Ninja H2R
2016年12月中旬に発売されたばかりで現在最も旬なキットのひとつ。カウルがビス固定なので完成後も取り外してメカを見せることも可能。最大の特徴であるカウルのカラーリングの再現はTS-40メタリックブラックが指定されているので、カーボンデカールとメッキ調塗料で立ち向かうチャレンジャーが続出しそう。




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