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出土した飛燕戦闘機の残骸

2005年8月14日 大阪府交野市  写真と文: Inochan氏 + 管理人おまみ



去る2005年3月16日に大阪府交野市(かたのし)の第二京阪道路の建設現場において、旧陸軍三式戦闘機キ-61「飛燕」の残骸が発見され、交野市立「いきいきランド交野」で8月14日から一般公開されています。

大戦末期の昭和20年、大阪に来襲した米軍機編隊60機を迎撃するために伊丹飛行場(現・大阪国際空港)から戦闘機隊17機が出撃。星田村(現大阪府交野市)上空において空戦を展開し、中村純一陸軍中尉(当時少尉)の操縦する三式戦闘機飛燕が撃墜され、中尉はパラシュートで脱出しましたがその紐を米軍機が翼で切断したために墜落、戦死されました。

中尉の遺体は地元住民によって回収され手厚くお通夜までを行って、翌日伊丹基地へ引き取られました。



さて飛燕とはこんな形の戦闘機です。
水冷式V型エンジンを搭載してるため、エンジンカウル先端が絞り込まれたロングノーズの美しい流面形のデザインが外観上の特徴。飛燕は陸軍機ですが、海軍の彗星艦爆も同じエンジンを積んでいて、これに似たデザインです。
製作者: Inochan (型式とカラーリングは発掘された実機と異なるかもしれません)
今回の出土品は、黄色い枠で囲まれた機首の地中に奥深くめり込んだ部分で、プロペラや機関砲など。中でも一番大きな出土品は「ハ-40エンジン」です。
展示物の説明ボードによると

平成17年3月23日、交野市星田の第二京阪道路より発掘。杭打込作業において、杭打機械の先端が接触したためエンジン端部が大きく損傷している。

とありました。
画像でいうところの手前の側面下部分になります。杭打機による穴がズドンと開いてるのです。

クリックすると大きな画像が見れます。


■発見された大戦中機と思われる残骸の調査結果報告(一部抜粋)

残骸は、旧陸軍の3式戦闘機「飛燕」である可能性が高い。同機は戦時中に、I型・II型をあわせ、2500機程度製造されており、大戦末期には日本国内の各基地から、B-29の迎撃のために使用されてるため、日本国内のどこでも発見される可能性がある。操縦ロッド、酸素ボトルは飛燕と共通の五式戦闘機の可能性もあるが、飛燕の特徴であるエンジンの補機類と同じ場所から出土しているのであれば、ほぼすべて飛燕の残骸とみて間違いないと思われる。細部の形式は写真だけでは不明である。


クリックすると大きな画像が見れます。


博物館のキレイにレストアされた機体と違ってボロボロに赤錆びて朽ちたその残骸は、戦争の生々しさを物語っていました。

さて今回の展示で残念だったことは、機関砲の銃口が大阪府警により溶接によって塞がれてしまった事です。安全上の処置との事ですが、ひん曲がって錆び付いた機関砲に一体どのような危険があるのか貴重な遺品の見栄えを大きく損なうだけで野暮な事をしたものです。


当時空戦のあった交野市星田の現場付近。交野市は奈良県に隣する大阪府の郊外で、今でも田畑が広がり60年前の面影を残します。

左奥に建設中の高架が第二京阪道路の建設現場。土中に埋没していた飛燕はここで見つかりました。
道路完成後はこののどかな田園風景も大きく様変わりすることでしょう。


後日、中村陸軍中尉の墜落死場所に建立された鎮魂碑へも行って来ました。

この日はとても暑い日だったせいか水の入ったペットボトルが添えられており(単にネコよけだったのかも)、飛燕の残骸の公開開始日もしくは終戦記念日に添えられたと思われる花がすでに枯れていました。献花を途中で買ってくればよかったなあと後悔することしかり。英霊に手を合わせてきました。



場所はJR学研都市線星田駅の北側出口を線路沿いに東へ3〜4分歩いたところです。

ここはかつて同駅から枚方(ひらかた)の大阪陸軍造兵廠香里火薬製造所までの軍用鉄道が引かれていた土地で、今は小ぢんまりした道路になっています。

地図
を見ると星田駅から二股に分かれたような不自然な道路区画から、鉄道跡地なのがモロわかりです。

大きな地図で見る

関西での戦争被害は大阪市や神戸市周辺の大空襲ぐらいしか知りませんでしたが、県境の内陸部まで敵機が侵入し空戦が行なわれていたとは・・・60年前はこんな片田舎の田園地帯でさえも戦場だったのです。戦争の傷跡は案外どこにでもにあるものなのですね。



三式戦闘機「飛燕」残骸品一般公開
場所: 576-0065 大阪府交野市向井田2-5-1 いきいきランド交野1Fロビー内
問い合わせ: 交野市(人権政策室) 072-892-0121(代表)
交野市ホームページ: http://www.city.katano.osaka.jp/
いきいきランド交野ホームページ: http://www.city.katano.osaka.jp/kakka/ikiiki/


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